「スタビライズ」のコントロール
「スタビライズ」ビヘイビアでは、「マッチムーブ」ビヘイビアおよび「動きを
解析」ビヘイビアとは異なる方法を使用して、クリップ内の動きを解析します。
通常、クリップのスタビライズにはトラックを使用しません。このビヘイビア
は、高度な方法で動きを予測するものであり、あるフレーム内の全ピクセルが後
続フレームにトラッキングされます。この解析に基づいて、動きのベクトルが計
算されます。解析は、クリップ全体に対して、またはトラック領域に対して実行
することができます。トラック領域とは、解析対象クリップのうち、ユーザが定
義した領域を指します。
解析の結果、何らかの修正が必要となった場合、クリップの非連続時間領域に対
してトラッキングを手動で実行することができます。たとえば、追加したカメラ
バンプがフレーム 350 から 380 までの範囲に影響する場合は、トラックを追加
し、クリップの該当部分を解析することができます。解析で記録されたデータ
は、クリップをさらにスムーズにするため、トラッキングで記録されたデータに
追加されます。
「スタビライズ」ビヘイビアは、クリップ内での水平、垂直、または水平と垂直
の動きを考慮するだけでなく、位置、調整、および回転も検証します。
メモ: 「スタビライズ」ビヘイビアを適用することができるのは、フッテージオ
ブジェクト(QuickTime ムービーまたはイメージシーケンス)のみです。
「スタビライズ」ビヘイビアの使いかたについては、「
「スタビライズ」のワー
クフロー
」を参照してください。
メモ: 「方法」ポップアップから「スムーズ」を選択すると、HUD および「イン
スペクタ」で追加のパラメータが使用可能になります。
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第 22 章
モーショントラッキング
「インスペクタ」のパラメータ
ソース:
「ソース」ウェルを消去するには、項目をウェルの外までドラッグし
て、マウスボタンを放します。ビヘイビアのソースオブジェクトをこのウェルに
ドラッグします。ソースオブジェクトは、別の「スタビライズ」ビヘイビアで
も、フッテージオブジェクトでもかまいません。
「アクション」ポップアップメニュー:
プロジェクト内のトラッキングデータ
(ほかのトラッキングビヘイビアから取得したもの)のリストから選択します。
メモ: 「アクション」ポップアップメニューからオプションを選択すると、ト
ラックを追加するための「追加」ボタンが使用できなくなります。
動き:
モーショントラッキング解析を開始するには、「解析」ボタンをクリッ
クします。「解析」をクリックすると、進行状況ウインドウが開き、トラッキン
グの進捗が表示されます。解析を停止するには、進行状況ウインドウの「停止」
ボタンをクリックするか、Esc キーを押します。
「スタビライズ」ビヘイビア(トラック不使用)を使用すると、トラックが現在
の再生ヘッド位置からではなく、クリップの先頭から開始されます。
品質:
このポップアップメニューを使用して、モーション解析の詳細レベルを
定義します。2 つのオプションがあります:
• 高速: このオプションを選択すると、操作が高速で実行されます。ただし、
モーション解析の詳細レベルは下がります。
• 高品質: このオプションを選択すると、より詳細な解析が行われますが、時
間がかかります。クリップに回転が含まれる場合は、このオプションの使用を
お勧めします。
領域をトラック:
このチェックボックスを選択すると、解析する対象物や領域
を定義できます。キャンバスに赤いオーバーレイが表示されます。このオーバー
レイ以外の部分は無視されます。「領域をトラック」のオンスクリーンコント
ロールは、シェイプのオンスクリーンコントロールに似ています。
「領域をトラック」の使いかたについて詳しくは、「
「スタビライズ」ビヘイビ
アの「領域をトラック」を調整する
」を参照してください。
重要:
トラック領域には、動きを抽出できる領域がいくらか含まれている必要
があります。トラック領域をトラッキング対象オブジェクトのマスクとして使用
することはできません。
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第 22 章
モーショントラッキング
方法:
このポップアップメニューを使用して、スタビライズをクリップに適用
する方法を定義します。2 つのオプションがあります:
• スタビライズ: この方法を使用すると、ショット内の主な対象物の動きがロッ
クされ、動かなくなります。そのため、トラッキングされている対象物の周り
を背景が動いているように見えます。
• スムーズ: この方法を使用すると、フレーム内での動き全般を継続したまま、
カメラの視覚的な動きをスムーズにできます。この方法は、カメラの動きから
ジッタを取り除く場合に便利です。このモードが有効になっている場合、ス
ムージング可能な次元ごとに以下の 3 つのスライダが提供されます。
変換(スムーズ):
「方法」を「スムーズ」に設定した場合、このスライダを
使って、X 次元および Y 次元での動きをスムーズにします。
回転(スムーズ):
「方法」を「スムーズ」に設定した場合、このスライダを
使ってイメージの回転をスムーズにします。
調整(スムーズ):
「方法」を「スムーズ」に設定した場合、このスライダを
使ってむらのあるズームをスムーズにします。
メモ: 確実にクリップをズームする場合以外、「調整(スムーズ)」に 0 より大
きい値を設定しないでください。
枠線:
クリップをスタビライズした場合、スタビライズされたイメージに生じ
た変形により、動きを伴う黒い枠線がクリップのエッジの周りに表示されること
があります。このポップアップメニューを使用して、エッジを処理する方法を定
義します。2 つのオプションがあります:
• 通常: スタビライズされたフッテージのサイズが保持されます。動きを伴う
黒い枠線は、クリップのエッジの周りにそのまま残ります。
• ズーム: クリップがキャンバスの最大サイズまで拡大されます。これにより、
黒い枠線がエッジの周りに表示されなくなります。ただし、スタビライズされ
たクリップが拡大されます。
Zoomed borders scale
the stabilized clip so
the clip does not move
away from the edge
of the Canvas.
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第 22 章
モーショントラッキング
方向:
このポップアップメニューでは、記録された動きを解析済みのイメージ
に適用するときの次元(水平と垂直(X と Y)、水平(X のみ)、または垂直(Y
のみ))を指定することができます。
調整:
このパラメータを使用すると、スタビライズを適用する変形を選択する
ことができます。このメニューには 3 つの「調整」ボタンがあります:
• 位置: 有効にすると、解析されたイメージの位置にスタビライズが適用され
ます。
• 調整: 有効にすると、解析されたイメージの調整にスタビライズが適用され
ます。
• 回転: 有効にすると、解析されたイメージの回転にスタビライズが適用され
ます。
トラック:
「追加」ボタンをクリックすると、「スタビライズ」ビヘイビアに
トラックが追加されます。デフォルトでは、トラックはキャンバスの中央に追加
されます。最大で 2 つのトラックを「スタビライズ」ビヘイビアに追加すること
ができます。追加すると、トラック 1 が位置のアンカーとして、トラック 2 が回
転の調整に使用されます。
トラックを「スタビライズ」ビヘイビアに追加すると、以下のようになります:
• 「領域をトラック」パラメータが使用できなくなります。
• 「逆方向」チェックボックスが使用可能になり、クリップを後方にトラッキン
グできるようになります。
• 「トラックのプレビュー」、「トラックをオフセット」、「自動ズーム」、
「自動ズームモード」、「先のフレームを見る」をはじめとするトラックリス
トのコントロールが使用可能になります。詳しくは、「
「動きを解析」のコン
トロール
」を参照してください。
メモ: 別のビヘイビアをスタビライズのソースとして使用する場合、トラック
を「スタビライズ」ビヘイビアに追加することはできません。
HUD コントロール
「スタビライズ」の HUD には、別のスタビライズトラックをビヘイビアに読み
込んだり(「ソース」ウェルまたはトラッキングビヘイビアのポップアップメ
ニューを使用)、モーション解析を開始したり(「解析」ボタンを使用)、ク
リップにスタビライズを適用するのか、スムーズを適用するのかを指定したり
(「方法」ポップアップメニューを使用)、スタビライズクリップのサイズ決定
の方法を定義したり(「枠線」ポップアップメニューを使用)、解析されたク
リップに適用する変形を選択したり(「調整」パラメータを使用)するための各
コントロールが含まれています。
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モーショントラッキング